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日本の再生可能エネルギーへの移行に関して投資家が抑えておくべきポイント

6 min read 2 September 2025 By Zhi Qin Low, Hiroshi Kunimune and Gabriel Teo, experts in Energy and Resources

世界第3位の自由電力市場である日本は、長期的な持続可能性と収益性の両方を狙う投資家にとって魅力的な投資先となっています。日本が輸入に大きく依存する石炭・液化天然ガス(LNG)に再生可能エネルギーが取って代わろうとする中、日本のエネルギー大転換は、レジリエンス強化や長期的なエネルギー安全保障に向けて、戦略上極めて重要な転機となります。

日本政府は今後10年間に公的資金、民間資金の両面で150兆円(9,960億米ドル)の投資を想定しています。日本が打ち出した戦略の方向性は、規制上の支援と政策的なインセンティブも手伝って、再生可能エネルギー投資家にとって明確な指針となります。しかし、同市場には特有の制約と課題もあります。 

弊社の「Japan: Wholesale Electricity Market Report(日本卸電力市場レポート) 」では、日本のエネルギー市場における需要面・供給面の変化について、公開情報とBaringa独自の見解をもとに、独立した視点を投資家の皆様にお届けします。同レポートは数々の重要な疑問点に答えており、その一部を以下にご紹介します。

投資機会の促進要因には、どのようなものがあるのか

日本の再生可能エネルギー市場は、規制当局の高い目標と電力需要急増の見通しを追い風に、一大成長期に入りつつあります。 


政府がまとめた「第7次エネルギー基本計画」は野心的な目標を掲げており、2040年までに再生可能エネルギーが電源構成の最大50%を占める見通しとしています。これにともない、温室効果ガスの排出量を73%削減(対2013年度比)し、再生可能エネルギーの割合は現行のわずか15%から50%に拡大することになります。 

政府は現在、電力使用量の減少という以前の予測とは異なり、産業界や社会のGX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展を背景に、電力需要が最大1,200TWhに拡大すると予測しています。この変化を受け、太陽光発電や洋上風力発電、蓄電池、水素インフラのほか、拡大する非化石価値取引市場で大きな投資機会がもたらされます。

 

出所:Baringa

政府はこうした目標を達成するため、GX推進法や水素基本戦略を含め、実現に道を開く各種改革を進めています。遠隔地にある再生可能エネルギー発電所と都市部の需要地を結ぶ新たな高圧直流送電(HVDC)海底ケーブルの敷設をはじめ、送電網への大規模投資も進行中です。洋上風力発電分野では、日本は2040年までに30〜45GWの案件形成を目標に掲げ、先ごろ、洋上風力発電促進区域の指定可能エリアが排他的経済水域にも拡大しました。

太陽光発電の投資家は「フィードインプレミアム(FIP)」制度で生じる収益の不確実性にどのように対応できるのか

FIP制度に基づく支払い金は卸電力市場価格に連動しているため、太陽光発電事業者は卸価格の力学を理解するとともに、これに起因して収益の不確実状態が次々と起きる状況に対し、緩和措置を講じる必要があります。その1つの手段として、ESG目標達成に向けてグリーン電力使用に積極的な需要家企業と電力購入契約(PPA)を締結する方法があります。また、太陽光発電開発に蓄電池を組み合わせ、タイムシフト発電により市場価格が高いときに売電する方法もあります。これは、タイミングと複雑な運用条件について慎重な考慮が求められる戦略です。

価格と出力抑制のリスクに対する緩和策にはどのようなものがあるのか

日本で再生可能エネルギーが拡大するにつれて、出力抑制や価格変動のリスクも大きくなります。供給超過時に発生する経済的出力抑制はほとんどの地域で一般的に見られる一方、送電網の系統混雑により、東京電力管内で技術的出力抑制が生じ始めています。同時に、太陽光発電は「ダックカーブ現象」がいっそう大きくなっており、日中のピーク時に日本卸電力取引所(JEPX)での取引価格が0.01円/kWhにまで落ち込むことが増えています。こうしたリスクは、プロジェクトの収益やオフテイカー(購入者)のクリーンエネルギー目標達成能力を脅かします。デベロッパーはリスクの影響を抑えるため、系統アクセスに優れ混雑度の低い拠点を優先する必要があります。 

出所:経済産業省

再生可能エネルギーの投資家にとって、安定したキャッシュフローを確保できるところは他にもあるのか

日本の長期脱炭素電源オークション(LTDA)は、再生可能エネルギーの投資家にとって安定的で予測可能なリターンの希少な源泉になります。2023年に始まった同制度では、落札者は容量確保の対価として20年間にわたって固定収入が得られるため、クリーンエネルギープロジェクトへの資本投資のリスク回避につながります。技術特定型のオークションを通じた契約方式であるLTDAは、これまでに再生可能エネルギー、蓄電池、水素対応火力発電所、原子力発電所の更新を支援しています。現在は二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトも適用対象となったほか、洋上風力発電も適用の見込みとなったことを受け、この制度は日本の再生可能エネルギー移行を支える重要な柱になりつつあります。次回のオークションは2025年第3四半期に開始されます。

洋上風力発電プロジェクトのオークションに向け、どのような準備が必要か

洋上風力発電の投資家は、オークション評価基準の複雑な側面を理解する必要があります。「ゼロプレミアム水準」の入札行動といった最近の動向を受け、入札アドバイザーを起用したコンソーシアムの参加が増えています。落札のためには市場に精通するとともにオークション規則やオークション理論を理解しておく必要があります。それによりコンソーシアムは、戦略を策定して自信を持って応札することができます。

蓄電池デベロッパーはどのようにリスクを最小化できるのか

出所:Baringa 

日本の系統蓄電池には複数の収益源があり、卸市場、容量市場、需給調整市場に参加可能です。蓄電池デベロッパーはLTDAを活用することにより、耐久性が比較的長いプロジェクトに限定という条件は付くものの、容量確保の対価として収入を20年間確保し、残る変動収入の部分も他の電力市場で最適化することができます。

市場収益に依拠したいわゆるマーチャント運用は、FIP併設型蓄電池プロジェクトへの関心が高まるのと併せて、重要性が増し続けています。こうしたプロジェクトでは、蓄電池事業収益の最大化につながる蓄電池取引のアルゴリズムを開発するうえで、卸電力市場、需給調整市場、容量市場について信頼性の高い価格予測が必要です。また、地域の選定や放電時間、蓄電池の劣化が取引戦略や収益源拡大にどのような影響を及ぼすのか、全体の力学を理解しておくことも非常に重要です。

水素やアンモニアのプロジェクトはどうか

日本は世界最大の水素・アンモニア輸入国になる見込みです。LTDAは、水素・アンモニア混焼発電の資本投資に対して20年以上の固定収入を提供しており、既存設備でも本制度を活用したリパワリングが実現可能です。次回のオークションからは、水素プロジェクトで燃料変動費も入札価格に含められる可能性があります。

日本は同時に、電源構成に水素ベース燃料を導入する確固たる基盤の整備を進めています。こうした施策には、低炭素である水素と化石燃料とのコスト差を埋めてクリーンな水素の導入を促進するための差額決済契約(CfD)制度による補填などがあります。

Baringaによる支援体制

Baringaでは、洋上風力発電や蓄電池からコーポレートPPA、LTDAに至るまで、日本のエネルギー産業を支える投資家、デベロッパー、オフテイカーの皆様のニーズにお応えします。最善の技術、立地、参入時期を見極め、お客様の確かな投資判断をお手伝いします。弊社独自の系統・出力制御モデル(国内全9地域をカバー)を生かし、各地点に特化した高精度の知見と堅牢なリスク評価を提供します。

日本の市場ルールとオークション制度設計に精通する弊社は、PPA取引、LTDA入札、市場予測に取り組むお客様の指針となります。BESSデベロッパーを対象とした「Japan Battery Market Report(日本蓄電池市場レポート) 」により、長期的機会と収益可能性を明確に把握することが可能になります。

投資機会に関する詳しい情報をご案内します。また、市場参入の支援も承っています。お気軽にお問い合わせください。

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